「モールス」 2010年 米
これは優れた映画。ヴァンパイア=吸血鬼の悲しい物語。
ヴァンパイアを演じているクロエ・モレッツがとにかくすばらしい。ヴァンパイアの残酷さ、悲しみ、そしてエロス。11~12才でそれを完璧に表現している。才能とはこういうものなんだと思う。
吸血鬼は、人の生き血を吸い、自身は永遠に生き続ける不死の存在だ。永遠の時間を背負うということ、それ以上の悲しみがあるだろうか。この映画は、その悲しみを見事に描いている。
タイトルの「モールス」とはモールス信号のモールスで、、ヴァンパイアに恋した少年が幸せそうにモールス信号をたたくラストシーンは、観る者を悲しみの底に突き落とす。
映画がすばらしくて、原作の小説も読んだ。上、下二巻の長いものだけど、こちらもおもしろくて一日で読了。原作のタイトルは「正しきものを入れよ」という意味だそうだが、内容から確かに「モールス」ではないな。
原作と映画が違うのは当たり前だけれど、ヴァンパイアの見せかけ上の父親の描かれ方の違いには少々驚いた。映画ではこの父親が、やがてあの心に残るラストシーンに繋がるわけで、原作ではラストシーンの意味合いが大きく違う。
原作の映画化は原作が良いからされるわけで原作を超えるのは難しいものだと思うけど、これは原作以上だ。
2016年1月21日木曜日
2016年1月15日金曜日
「熱燗酒 緑川 正宗」
「熱燗酒 緑川 正宗」
最高の燗酒。今のところ、これ以上の燗酒は知らない。
元旦、今年最初の酒もこれ。暮れに用意しといた。最初はこれだと。
名前に熱燗酒と付いているように、温度を上げるとなんとも芳醇な香りと味が増してくる。
常温でも美味しいけれど、いつもの新潟の酒って感じでおもしろくない。どうしても、温めて飲みたい酒だ。熱燗 緑川 正宗、作り手の意図と自信が感じられる。
この酒は仕込みにもち米が使われている。だいたい、餅は温かく食べるものだ。焼いたり、雑煮にしたり、つきたてを大根おろしで食べたり。
熱いくらいの燗にすると、あの温かいもち米の旨味が、ほんのりと、しっかりと、けっしてくどくなく、蘇ってくる。
最高の燗酒。今のところ、これ以上の燗酒は知らない。
元旦、今年最初の酒もこれ。暮れに用意しといた。最初はこれだと。
名前に熱燗酒と付いているように、温度を上げるとなんとも芳醇な香りと味が増してくる。
常温でも美味しいけれど、いつもの新潟の酒って感じでおもしろくない。どうしても、温めて飲みたい酒だ。熱燗 緑川 正宗、作り手の意図と自信が感じられる。
この酒は仕込みにもち米が使われている。だいたい、餅は温かく食べるものだ。焼いたり、雑煮にしたり、つきたてを大根おろしで食べたり。
熱いくらいの燗にすると、あの温かいもち米の旨味が、ほんのりと、しっかりと、けっしてくどくなく、蘇ってくる。
2016年1月14日木曜日
「アードベッグ 10年」 羊の皮を被った狼のような羊。
仕事快調にはかどった。集中してよく働いたっていう満足感に満たされて、明るいうちからまったく後ろめたさもなくイッパイ。
そんな時間だとツマミいらずのアルコールってことに自然となる。
「アードベッグ 10年」
僕の圧倒的に消費量の多い、アイラ島のシングルモルト。
その中でも、アイラ特有の煙臭が強烈な銘柄だ。
そんな個性的な香りとうらはらに、グラスに注ぐと色は極々薄い琥珀色。これほど薄い色のウイスキーは少ない。羊の皮を被った狼ッて感じだ。
で、味の方は、さっきも言ったように、アイラの中でも強い香りがくるんだけど、いっしょに甘さも強く感じられる。その甘さがくせ者。
こいつをどう表現したらいいんだろう。不味いのに旨い、これはぜんぜん違う。臭いのにいい匂い、これもぜんぜん違う。
とにかく、羊の皮を被った狼のような羊。
飲み過ぎに注意。
そんな時間だとツマミいらずのアルコールってことに自然となる。
「アードベッグ 10年」
僕の圧倒的に消費量の多い、アイラ島のシングルモルト。
その中でも、アイラ特有の煙臭が強烈な銘柄だ。
そんな個性的な香りとうらはらに、グラスに注ぐと色は極々薄い琥珀色。これほど薄い色のウイスキーは少ない。羊の皮を被った狼ッて感じだ。
で、味の方は、さっきも言ったように、アイラの中でも強い香りがくるんだけど、いっしょに甘さも強く感じられる。その甘さがくせ者。
こいつをどう表現したらいいんだろう。不味いのに旨い、これはぜんぜん違う。臭いのにいい匂い、これもぜんぜん違う。
とにかく、羊の皮を被った狼のような羊。
飲み過ぎに注意。
2016年1月12日火曜日
「おれの中の殺し屋」 ジム・トンプソン著
「おれの中の殺し屋」 ジム・トンプソン著
強烈な犯罪小説。
こんなのがアメリカでは60年以上前に書かれていたという事実に驚かされる。
強烈な犯罪小説。
そもそも人間に何がわかる?俺たちが住んでいるのはひどくおかしな世界なんだよ。悪党たちが俺たちにもっと金が入るよう願っていて、善人たちがそうならないよう妨害している。おれたちのためにならないからって。
食いたいものが食いたいだけ手に入ったら、俺たちは山ほど糞をすることになってしまうからだ。そうなったらトイレットペーパー業界は大インフレだ。おれの理解するところでは、そういうことが議論されているようだ。
おれが女を殺したんだよ。二人とも殺した。
奴らには殺される理由はなかった。だけど、おれの方には殺したい理由があった。
こんなのがアメリカでは60年以上前に書かれていたという事実に驚かされる。
ずいぶん本はよんだけれど、ここが見せ場という所にくると作者は必ず頭に血が上ってしまうようだ。やみくもに言葉を羅列して、瞬く星が深い夢のない海に沈んでいくなどという戯言を並べだす。
人がものに張るレッテルは、人がどこに立ち、物がどこに置かれているかによってどうにもなるものだって見るようになったんだ。”雑草とは場違いの場所に生えた植物のことである”タチアオイがトウモロコシ畑に生えていたら雑草、庭に生えていたらそれはきれいな花だ。
これで終わりだと思う。おれたちみたいな奴らにも次の場所でチャンスが与えられるなら別だが。おれたちみたいな奴ら。おれたち人間に。
2016年1月10日日曜日
「小さな家」 ル・コルビュジエ著
「小さな家」 ル・コルビュジエ著
何年かに一度、思い出したように手に取る好きな本だ。たった80ページ、薄くて小さな本。
建築家コルビュジエが、両親のために、スイスの湖の畔に立てた小さな平屋について書いたもの。
この家、美しい湖の畔という立地にもかかわらず、湖が見えないように壁で囲われている。なぜなのか。僕が最初にこの本を読んで感銘を受けたのはそのことについて書かれた部分だった。
そして、この本が出版されたのはそれから30年以上経ってからだ。
竣工から20年経ってコルビュジエが描いたこの家のデッサンも多数載っている。
コルビュジエのこの家への思い出と愛情がこもったすばらしい本。
何年かに一度、思い出したように手に取る好きな本だ。たった80ページ、薄くて小さな本。
建築家コルビュジエが、両親のために、スイスの湖の畔に立てた小さな平屋について書いたもの。
この家、美しい湖の畔という立地にもかかわらず、湖が見えないように壁で囲われている。なぜなのか。僕が最初にこの本を読んで感銘を受けたのはそのことについて書かれた部分だった。
この囲壁の存在理由は、視界を閉ざすためである。四方八方に蔓延する景色というものは圧倒的で、焦点を欠き、長い間にはかえって退屈なものになってします。このような状況では、もはや景色を眺めることは出来ないのではないだろうか。景色を望むにはむしろそれを限定しなければならない。
囲われた庭を形成すること。この小さな庭は室内空間に匹敵し、もう一つの緑あふれる居間となる。この家は、1924年竣工だから、本の中の写真は全て白黒。
そして、この本が出版されたのはそれから30年以上経ってからだ。
竣工から20年経ってコルビュジエが描いたこの家のデッサンも多数載っている。
コルビュジエのこの家への思い出と愛情がこもったすばらしい本。
2016年1月5日火曜日
「妻を殺したかった男」 パトリシア・ハイスミス著
「妻を殺したかった男」 パトリシア・ハイスミス著
ハイスミス二作目の長編で、60年も前に書かれた作品。これほど優れた作品でも、とっくに絶版、古本で手に入れるしかない。残念なことだ。
冒頭、ある男が、妻を計画的に惨殺する。
そこから、裕福な弁護士夫婦の話へ。上品でゆとりのある友人たちに囲まれてパーティ開き合ったりして楽しくやっている。表面上は。けれど、弁護士の妻はかなり性格に問題有り、妻の態度のせいで離れていった友人も何人もいたりで、妻に離婚を切り出すまでに気持ちは離れている。
そんななかで、弁護士の男に信じられない出来事が起こる。
原題は「THE BLUNDERER」 失敗する人
この弁護士、間抜けなのだ。殺意を抱くほどの妻にたいしてもはっきりとした態度をとらない、ズルいとも言えるような煮え切らない男。
そして、不意打ちのように身に降りかかってきた事件で、軽薄としか言えないような間違いを重ねて、苦しい立場に追い込まれていく。
親友が忠告する。
「小出しにしないで、すべて打ち明けたほうがいい」
そのタイミングを逸してしまった、失敗する人。
パトリシア・ハイスミスの作品はどれも、細部にまでまったくスキがない。追い詰められた者の心理、心の揺れ、最後へと進むことになる案外小さなきっかけ。すべてが圧巻だ。胸が締め付けられるような読後感を味わえる。
ハイスミス二作目の長編で、60年も前に書かれた作品。これほど優れた作品でも、とっくに絶版、古本で手に入れるしかない。残念なことだ。
冒頭、ある男が、妻を計画的に惨殺する。
そこから、裕福な弁護士夫婦の話へ。上品でゆとりのある友人たちに囲まれてパーティ開き合ったりして楽しくやっている。表面上は。けれど、弁護士の妻はかなり性格に問題有り、妻の態度のせいで離れていった友人も何人もいたりで、妻に離婚を切り出すまでに気持ちは離れている。
そんななかで、弁護士の男に信じられない出来事が起こる。
原題は「THE BLUNDERER」 失敗する人
この弁護士、間抜けなのだ。殺意を抱くほどの妻にたいしてもはっきりとした態度をとらない、ズルいとも言えるような煮え切らない男。
そして、不意打ちのように身に降りかかってきた事件で、軽薄としか言えないような間違いを重ねて、苦しい立場に追い込まれていく。
親友が忠告する。
「小出しにしないで、すべて打ち明けたほうがいい」
そのタイミングを逸してしまった、失敗する人。
パトリシア・ハイスミスの作品はどれも、細部にまでまったくスキがない。追い詰められた者の心理、心の揺れ、最後へと進むことになる案外小さなきっかけ。すべてが圧巻だ。胸が締め付けられるような読後感を味わえる。
2016年1月4日月曜日
映画 「ふるえて眠れ」
「ふるえて眠れ」 1964年 アメリカ モノクロ
去年、あまりの凄さに驚いた傑作「何がジェーンに起こったか」と同じ、ロバート・アルドリッチ監督とベティ・デイビスのコンビ。
こちらも、とにかく面白い。133分とかなり長いけど、まったくダレない。
古い館に住む老女の過去が明かされていくというのは「何がジェーンに・・・」と同じ設定だ。
この「ふるえて眠れ」の方が、より謎解きの要素を強くした感じ。その謎解きのところで、後で矛盾と感じてしまう思わせぶりな表情とか、ちょっと無理ないか、みたいなB級ホラー的な部分があって、少々マイナスだと思うけど、まぁ、これだけ面白きゃちっちゃな事と許せちゃう。ベティ・デイビスの演技は凄いのひと言。抑えのきいたラストも好きだ。
去年、あまりの凄さに驚いた傑作「何がジェーンに起こったか」と同じ、ロバート・アルドリッチ監督とベティ・デイビスのコンビ。
こちらも、とにかく面白い。133分とかなり長いけど、まったくダレない。
古い館に住む老女の過去が明かされていくというのは「何がジェーンに・・・」と同じ設定だ。
この「ふるえて眠れ」の方が、より謎解きの要素を強くした感じ。その謎解きのところで、後で矛盾と感じてしまう思わせぶりな表情とか、ちょっと無理ないか、みたいなB級ホラー的な部分があって、少々マイナスだと思うけど、まぁ、これだけ面白きゃちっちゃな事と許せちゃう。ベティ・デイビスの演技は凄いのひと言。抑えのきいたラストも好きだ。
2016年1月2日土曜日
ゴルフの初打ち。初読み東野圭吾著「変身」
ゴルフの初打ち。毎年正月休み中はとても混むから、早い時間に行く。三箇日は景品のくじ引きがあって、今年はインスタントラーメン5個パック。確か去年もこれだったな。隣の兄ちゃんはカップラーメン1個みたいだったから、良しとしよう。
今年はなんとか、大きくハンディ縮めたい。これが一番の望みかな。
午後は読書。正月用に読まないままになっている中から、これがかなり大量にあるんだけど、何作か出しといた中の、一番早く読めそうな東野圭吾著「変身」
買ったことすら忘れていた。もう、紙がまっ黄。
すっごい面白いかって言うとそこまでじゃないけど、でもさすが読ませます。快調に読み進んで、3時間で読了。380ページくらいだから、良いペースだ。面白いって証拠。アメリカの女優の誰かに似てる、そうだ、ジャクリーン・ビセットだって、古いなぁ。
今年はなんとか、大きくハンディ縮めたい。これが一番の望みかな。
午後は読書。正月用に読まないままになっている中から、これがかなり大量にあるんだけど、何作か出しといた中の、一番早く読めそうな東野圭吾著「変身」
買ったことすら忘れていた。もう、紙がまっ黄。
すっごい面白いかって言うとそこまでじゃないけど、でもさすが読ませます。快調に読み進んで、3時間で読了。380ページくらいだから、良いペースだ。面白いって証拠。アメリカの女優の誰かに似てる、そうだ、ジャクリーン・ビセットだって、古いなぁ。
今年の映画一本目 「やさしい本泥棒」
元日、今年の映画一本目に観たのは「やさしい本泥棒」
封を切らずにたまっている何本かのDVDの中から、晴れやかな元旦だし幸せな気持ちになれそうなのがいいかなと、タイトルでチョイス。
これ、とっても良い映画だ。ゆったりと静かで幸せな終わりは観たあとの気持ちを穏やかにしてくれる。
でも、中身はというと、とっても悲しい物語。
ナチス占領下のドイツの田舎町が舞台。第二次世界大戦が始まる少し前に、里子として中年夫婦の家にやってきた少女が主人公。学校へ行っていなかったんだろう、自分の名前も書けない。一冊の本を大事に胸に抱えて眠る。それは、死んでしまった弟を埋葬した時に墓堀人が落としていったものだ。ある夜、義父は、少女がベッドで抱えている本を見て驚く。
何の本か知っているのか?
知らない。
義父は、その、墓掘り人のマニュアル本を一緒に読みながら、少女に読み書きを教えていく。
優しい人たちに囲まれて少女はたくましく生きていく。
しかし、そんな生活も長くは続かない。時代に翻弄されてしまう。
僕は、こんな物語を見るとつくづく思う。
人は、いつ、どこに生まれるかで決まってしまうものだな。
自分が、今ここに居る偶然。不思議。幸せ。不幸。
封を切らずにたまっている何本かのDVDの中から、晴れやかな元旦だし幸せな気持ちになれそうなのがいいかなと、タイトルでチョイス。
これ、とっても良い映画だ。ゆったりと静かで幸せな終わりは観たあとの気持ちを穏やかにしてくれる。
でも、中身はというと、とっても悲しい物語。
ナチス占領下のドイツの田舎町が舞台。第二次世界大戦が始まる少し前に、里子として中年夫婦の家にやってきた少女が主人公。学校へ行っていなかったんだろう、自分の名前も書けない。一冊の本を大事に胸に抱えて眠る。それは、死んでしまった弟を埋葬した時に墓堀人が落としていったものだ。ある夜、義父は、少女がベッドで抱えている本を見て驚く。
何の本か知っているのか?
知らない。
義父は、その、墓掘り人のマニュアル本を一緒に読みながら、少女に読み書きを教えていく。
優しい人たちに囲まれて少女はたくましく生きていく。
しかし、そんな生活も長くは続かない。時代に翻弄されてしまう。
僕は、こんな物語を見るとつくづく思う。
人は、いつ、どこに生まれるかで決まってしまうものだな。
自分が、今ここに居る偶然。不思議。幸せ。不幸。
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