何年かに一度、思い出したように手に取る好きな本だ。たった80ページ、薄くて小さな本。
建築家コルビュジエが、両親のために、スイスの湖の畔に立てた小さな平屋について書いたもの。
この家、美しい湖の畔という立地にもかかわらず、湖が見えないように壁で囲われている。なぜなのか。僕が最初にこの本を読んで感銘を受けたのはそのことについて書かれた部分だった。
この囲壁の存在理由は、視界を閉ざすためである。四方八方に蔓延する景色というものは圧倒的で、焦点を欠き、長い間にはかえって退屈なものになってします。このような状況では、もはや景色を眺めることは出来ないのではないだろうか。景色を望むにはむしろそれを限定しなければならない。
囲われた庭を形成すること。この小さな庭は室内空間に匹敵し、もう一つの緑あふれる居間となる。この家は、1924年竣工だから、本の中の写真は全て白黒。
そして、この本が出版されたのはそれから30年以上経ってからだ。
竣工から20年経ってコルビュジエが描いたこの家のデッサンも多数載っている。
コルビュジエのこの家への思い出と愛情がこもったすばらしい本。
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